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第三回天下一武道会 三月六日(1)

[ 第三回天下一武道会 サイドA ]

第三回天下一武道会 三月六日

299 名前:三月六日投稿日:03/04/15 14:03 ID:???












昨日は日記を休んでしまった。
しょうがない。昨日はとても疲れていて、私は日記を書く気になれなかったのだ。と、自分に対して自分で自己弁護する。
うんざりするほど忙しくて、また厄介な作業が山ほどあったのだ。特にアオリを考えるのは大変だったし、一日ぐらいいいだろう。
しかし、三日坊主にならないように気をつけなければ。

今日はだから一日中のんびりしていた。おかげで疲れは取れたので、今から日記を書くことにする。
私はコタツ机の上のスタンドを灯して、大学ノートを広げる。
さて、何から書こう。まずは、昨日のことを忘れないうちに書いておこう。2日分書くのは面倒だが、仕方ない。


300 名前:三月六日投稿日:03/04/15 14:05 ID:???



昨日(三月五日)は、天気がよかった。太陽は燦燦と地上を照りつけていて、もうじき来る春の訪れを感じさせた。
けれどそれは私の憂鬱を取り払うほどものではなかった。
私ははじめての締め切りということで、あらゆる事態を想定しなければならなかった。締め切りに遅れる奴がいては困る。
だが私の心配をよそに、皆、律儀に12時までに提出してきた。アムロだけはフラウを通じて、であったけれど。

私が集まった原稿を一通りざっと眺めながらテーブルに広げて、整理していると、会長から電話だとロランがノックして教えてくれた。
偶然、廊下を歩いていたロランが、電話を取り次いでくれたのだ。最初は、喋り方から変質者だとおもったらしい。
会長の言葉遣いは独特で、まるでどろりとした粘膜のような印象をうけるけれど、それは流石にほんの少しだけカワイそうだと思った。
では、最初の便宜的な挨拶は省いて、重要なところだけここに書いておく。


私と会長の会話。

「・・・ということはですね。会長、この原稿は前に言われたとおり、全てスキャンして会社に送ればイイのですね?」

「ええ。そうしてくれると、小生としても非常に助かるのではないかな、と思います。」

「判りました・・それでは夕方までに必ず送ります。jpeg形式でいいのですね?
ところで、これはいったいいつ発行されるのですか?製版、流通を会わせると今からざっと一ヶ月はかかりそうですが?」

「その問いには、バカじゃねーの、といったほうがいいですかね。発行は明日です。」

「え?明日?それは、無理ではないでしょうか?現実的ではないと思われますが。会長の妄想ですか?」
私は思わず失礼なことをいってしまった。まぁ、いいだろう。




301 名前:三月六日投稿日:03/04/15 14:20 ID:???



「妄想じゃ在りません。ブロードバンドの時代ですから、わざわざ印刷などとそんなことをするのは無意味ではないか、と私は思うわけです。
小生はこれをZIP形式にして自由にダウンロードできるようにしたいのです。それは必然だと思われるんです。
週刊少年ガンダムのホームページをつくってそこで配布することを思いついたんです。
というのはつまりこうすることで無駄な紙資源も押さえられることに気づいたからです。節約するという概念です。
決してこれは僕が禿げてるからいうわけじゃないんですが、紙は大事にしなければいけないな、と思うんです。
幸いなことに最近は、画像ビューワなるものも普及し始めたようですし、こういう試みもありかなって思えるんです。
シェアファイルのようにして配布するんですね。そうすれば面倒なそういう過程は全て省略できるんです。これは嬉しいことだといえます。
これはつまり来るべき時代のことを考えれば当然の流れではないか、とも思うんです。」


「なるほど。それは確かに次世代の雑誌ということを体現しているといえるかもしれませんね。
だけど、それではMXに代表されるような違法流通ソフトによって市場に出回る・・という可能性がありますが、その点はどうなさるんですか?
特別なパスコードを入れなければファイルを開けないようにするというような手段もありますが・・」

最近はやりの違法流通には、どの業界も頭を抱えているという。
この不景気に更にそういうことをされては、まさに企業としては泣きたくなるところだろう。
私は、そう思った。そうなっては利益が得られずに困るのだ。

302 名前:三月六日投稿日:03/04/15 14:22 ID:???

だが、私の予想に反して会長の考えは違った。


「そんなことは私は必要ないんじゃないかな、と思うんです。
違法で在れ、なんであれ市場に流通する、といったビビットな事実が今、大事なんじゃないかな、と思うからです。
少年ジャンプといった大衆雑誌に勝つにはまず最初に消費者の目に触れなければいけないと思うんです。
そうしなければ、結局はマイナーで終わってしまいます。しかし、僕は別にマイノリティを否定するつもりではないということも付け加えておきます。
ただ、ロリコンであるハヤオが大衆の羨望を勝ち取ったのは結局そこにあるのではないか、と小生は感じるんです。
つまりどんな低俗な内容であれ、やはり数を取ったほうが勝ちなんです。そこに僕は純粋な恐怖を覚えるんです。
自分は決して勝ち負けなんて気持ちは一切ないんですが、周りの評価は常にそこですから。
大衆はメジャーにならければやはり、トミノの試みは失敗に終わったんじゃないか、と考えていることなんです。
これにはまったくもって呆れざるを得ないのですが同時にどこかで、そう思われても仕方ないな、とも思うんです。
つまり僕が言いたいのは、そう言う風にはなりたくないな、ってことなんです。だから多少のことには目をつぶらざるを得ない、とも思うんです」


「ということは、つまり、市場に大量に流通することが目的であって、利益という面は求めていない、と考えてよろしいのですね?
そして別に違法な手段で流通されても構わない、と。まずは読者の目に触れることが大切だと。そういうことですね?」





303 名前:三月六日投稿日:03/04/15 14:26 ID:???


「そうです。幸い、ネットを使うことにより、製版などに伴う費用などというものはゼロです。だから、別に費用はかかりません。
その寮にいる方々のためにかかる様々な経費と、貴方の給料ぐらいだと私は思っています。
それぐらいなら別になんとかなるんじゃないかな、と思っちゃたんですね(笑)だから、お金と言う側面はこの際あまりいいません。
その点でこれはやはり僕の道楽と思われても仕方のないんですが、それは違うと言うことも強調したいんです。
この雑誌はきわめて、民主的かつ次世代的だよ、って伝えることを僕は、渇望してるんです。
アンケートをネット上で募集することで、葉書のように全体の数%で判断すると言うことをしないですみます。
明確な民主主義です。このアンケートの結果で打ち切り作品が決まります。これって凄いことだと、思います。
かつての大統領風にいわせてもらうとすると、「人民の、人民による、人民のための雑誌」って事ともいえると思うんですね。」

「なるほど。リンカーン的な雑誌というわけですか?モノはいいようですね。」

「ええ(笑)。だから、僕は。ってことです。それでは、よろしくお願いします」


と、いうような会話が私と会長の間であった。
私は話しながら、黒電話のコードを人差し指で巻いていた。くるくると回転しながら、幾重にもねじれているそれをもてあそぶ。
途中でランバラルとレビル将軍が仲良く談笑しながら、何処かに外出していった。親しいのだろう。
電話を切った後、会長はこういうことは昨日来たときにいえばよかったのではないか、とも思った。まぁ忘れていたのかもしれない。
それにしてもこの椅子はよくきしむ。古すぎるからだろう。太ったやつが座ったらきっと折れてしまうだろう。
そうしたら即刻新しいのに変えようと私は、きしむ椅子から立ち上がって黒電話の受話器を置きながら、そう思った。



304 名前:三月六日投稿日:03/04/15 14:31 ID:???




会長との電話を終えた私は食堂にいって、朝食の食器の洗い物をしているフラウに頼んでポットにコーヒーを入れてもらった。
部屋に戻り、取り合えず原稿をすべてスキャンする。
私は順にスキャンしながら、原稿用紙に全て手書きで書かれている全員の原稿をチェックした。


その全員の漫画や、コラムを読んで、概要などをつける。更に編集者のいわゆる「アオリ」と言うやつもいれている。
アオリってのは漫画の脇に載っているやつだ。そんなことまで考えないといけないとはなんとも気が重かった。
こういったものを考えるのは私は苦手なのだが、仕方がない。これも仕事だ。
私は、濃いコーヒーを片手に、タバコを吸いながら一人もくもくと考えた。
仕事だと割り切ると、けっこう案外考えるのは楽しかった。普段とは違う自分を発見出来た気がする。
何かを演じるのは嫌いではない。今の自分は、普段の冷静な自分ではなく、情熱を持った編集者の気持ちになりきる。


なんとか夕方までには出来あがった。
さて、記念すべき第一回目だ。まぁ、それほど嬉しくはないが。
だけど、一度乗りかかった船だ。うまくいけば、特別ボーナスもでるだろうから頑張るとしよう。
以下に、今回の作品の概要を忘れないように日記に記しておく。
ちなみに概要とは、私の解説みたいなものだ。さすがに本文自体を載せるのは、メンドクサイ。
値段は100円らしい。この定価が安いのかどうかは、よくわからない。




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