第三回天下一武道会 三月三十日
[ 第三回天下一武道会 サイドA ]
- 57 名前:三月三十日(1/2) :03/10/26 16:41 ID:???
- 今日も平和な1日だった。特に記すことがなにもないのだが、まぁ一応書いておこう。
今回の号は打ち切りなし、とつたえたのでみんな安心したのかすごくのんびりしていた。
打ちきりがないと、かくも人はのんびりできるものなのか、と私はみょうに感心したほどだった。それほど、まったりした雰囲気だった。
みんなそれぞれにそれぞれの方法で、この滅多にない平穏な時間を楽しんでいた。寝たり、買い物に行ったり、テレビをみたり、ゲームをしたり。
談話室で、ソファに座っていた私はマラソン中継をみながら膝の上で寝ている猫を撫でていた。イザークやブライトも一緒にぼーっとみていた。
マラソンはちょうどおり返し地点に到達したところらしく、一番先頭はやや小柄な日本人の女だった。この顔は以前、テレビで何度かみたことがあった。
その後からはアフリカ系の黒人女性が猛烈に追い上げていた。彼女の方は当たり前だが一度もみたことがなかった。
「どちらが勝つと思う?」と、私はブライトにきいた。
「そうだな。先頭の女性は左腕の振りが甘いからアフリカ人の勝ちだな」
ブライトの分析が正しいのかわからないかったが、やけに自信満々だったので信じた。そういえばそうかもしれない。が、結局そのまま日本人の女性が一着でゴールした。
「あれはヤヲ」とブライトが弁解するように言った。なんだその言い訳は。
けれど、マラソンとの連載には共通するものが多々あると私は考えた。
マラソンとおなじく持続力が必要であり、精神力が必要であり、応援してくれる人がいて、基本的には孤独な作業ということだ。
うーむ、ふかい。
三時のおやつにドーナツを食べた後、再びテレビをみながら今晩の食事はどうしよう、などと思っているとアムロがひょっこりと現れた。
買い物に行ってきたらしく右手になにやらビニール袋を持っていた。よくみるとどうやら切干(大根)だった。
「さっき商店街に電池買いにいったら、道端でこれ売ってる人がいたんで買ってきました」と、彼はいった。
「へぇ、それはまた渋いものを売ってるな・・まぁ、いい。そうだな、今晩は切干でシンプルにいくことにしよう」
最近手抜きとか弁当とかばかりの油っけの濃い食事ばっかりだったのでたまにはこういうのもいいだろう。
ときどきこういうものを食べておかないと、身体があぶらっぽくなってしまう。髪も油ぎってべたべたになる。
どことなく動きのキレもなくなる。やはり食事というのはバランスよく食べるべきなのだ。
「俺は反対だぞ千切りぃ!」とイザークが主張したが、無視した。若い奴ほどこういうものは食べたほうがいいのだ。
それに私はまだ腹が痛い。昨晩さけびすぎたせいで喉も少々いがらっぽい。
夕方、早速食事の用意にかかった。
アムロから受け取った切干大根を1時間ほど水につけて戻し、ごま油で炒め、そこに豆腐屋で買った厚揚げを加える。
それらを砂糖と醤油とみりんで味を調えた後、手鍋に入れて中火でぐつぐつと煮る。イイ香りが調理場いっぱいにひろがる。
さすがにこれだけでは寂しいので、湯豆腐をつくる。これは非常に簡単だ。その合間にアジといわしの身を丸めてフライにする。
かつおぶしでだしをとって、ねぎとわかめの味噌汁をつくり、更にいんげんのゴマ和えをつくった。
これでは若い奴には少々ものたりないかもしれないので、両手いっぱいのポークウインナーを炒めた。
冷蔵庫から冷やした麦茶を出して、テーブルにおくと準備は完了だ。
- 58 名前:三月三十日(2/2) :03/10/26 16:47 ID:???
腹が減っていたのか、みんなそれらの料理をぺろりと食べた。あっという間にアジがなくなり、ウインナーがなくなり、湯豆腐がなくなった。
小型の竜巻にまきこまれたかのような圧倒的な食欲だった。それが通り過ぎた後には、食べられるものはなにも残っていなかった。
いなごの大群といってもいいだろう。特にレビルはこういう食事が一番最高じゃ、と老人とは思えない食欲をみせていた。
切干大根をさかなに日本酒を飲んでいた私は、それをみているだけでお腹いっぱいになった。
食後。また談話室でみんなごろごろしていた。
フクダとスレンダーが遊んでいるのをみた私は、こっそりと猫の名前を考えることにした。
いい加減フクダは厭になったからだ。猫も厭だろう。さて、どんな名前がいいだろうか。私は観察した。
「おぉう・・やめろよ。フクダ。そんなとこ舐めるな・・おほっ・・俺そこ弱いんだって。フクダ、やめねぇか。ハハハ」
私はこの会話のフクダ、の部分を脳内で変換してみた。フクダじゃなくてデニム隊長だったらどうだろう。シチュエーションを想像してみた。
『おぉう・・やめてくださいよデニム隊長。そんなところ舐めないでください・・あぁ・・俺そこ弱いんです・・た、隊長!残れそうにありません!』
うーむ。気持ち悪い。悪酔いしそうになるな。この変換はやめておこう。猫もデニム隊長という名前はいやだろうし。
「こらぁ!俺のフクダにそんなばっちい顔を舐めさせるな!」
食事がようやく終わったイザークがスレンダーからフクダを取り上げた。スレンダーが不服をいうと、
「フクダは俺のだ。俺が拾ってきたんだからな!フクダも俺に一番懐いている!俺のことが好きなんだ!」と主張した。
私はこのフクダを、アスランに・・・いや、やっぱりやめた。こんな変換をしてもよろこぶのは極一部だけだ。
そもそもこの猫はオスなのか?メスなのか?そーいえば私はそれすらしらないのだ。「猫の名前・・何かないか・・」と私は呟いた。
「・・マチルダさん、とかよくないですか」
私の隣で静かに麦茶をのんでいたアムロがぼそっといった。「いや、断然アメリアだな!」とカクリコンがわりこんできた。
「みんな何いってんの!ラーカイラムにきまってるだろ!」とやや酔っ払ったブライトまで参入してきた。
レビルは「・・・キ、キシリア」と何故か顔をあからめながら提案した。
イザークはそんな私達に「黙れ!こいつはフクダでファイナルアンサーなんだよ!」と言い放った。なんてガキだ。
「せめてオーディエンスを使おう」と私が提案したのだが無視された。ちょっとは考えさせてくれてもいいじゃないか。
だいたい餌をやっているのは私なんだから。ぶつぶつ。
まぁ、けれど名前が嫌い、好きとこんな騒動をすることができるのはそれだけ暇で平和な証拠かもしれない。
ということで一句よんで今日はお仕舞いにしておこう。私が猫が嫌いかすきかこの句でよくわかると思う。
『ねーみんぐ こんな名前は 大きらい 好みがわかれる きょうの夕暮れ 』
(三月三十日)
- 59 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/10/26 22:48 ID:???
- デニム変換面白すぎ。
何はともあれ、2人とも残れて良かったよ。
- 60 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/10/28 15:50 ID:???
- ね こ 大 好 き
- 61 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/10/29 23:14 ID:???
- 事件もネタに利用するとは…やるな。