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第三回天下一武道会 三月二十五日

[ 第三回天下一武道会 サイドA ]

第三回天下一武道会 三月二十五日

288 名前:三月二十五日 :03/09/20 03:42 ID:???

今日は、一日中大雨が降っていた。
だが、そのおかげであの血痕が全て洗い流されたようだ。正直、ほっとした。
暫く屋上への立ち入りは禁止にしておこう。



夕方まで、なにをするでもなくボーっとリビングで時間をつぶした。あくびが何度もでた。
疲労が溜まっていたのだ。何せこの二日間はろくに寝ていなかった。
テレビ番組は相変わらず下らないものばかりだったが、そのぶん、何も考えないですんだ。
チャンネルをせわしなく変えながら、時折、可愛い子が出てくるとチャンネルを止めた。
ブラウン管には最近またメンバーを入れ替えたらしいアイドルグループが笑顔でインタビューに答えていた。

「○○ちゃんがいなくなるのは寂しいけど、残された私達は精一杯頑張ります!」
と、まぁそんなことをいっていた。
(卒業ねぇ。体のイイ厄介払いなんじゃないのか。打ち切りと何処がちがう?)
私はビールを飲みながら、そんなことを考えた。どこの世界も同じようなものだ。

そのアイドルグループは、初期とメンバーが変わりすぎて私には以前と同じグループとは思えなかった。
まるで違う。ただ、素人くささを特徴としてウイウイしくみせているところだけが一緒だ。
どうしてこんなグルーうが人気があるのだろうか。
きっと、名前さえ同じならそれでいいのだろう。内容がどんなに変わっても。
20年前のジャンプと今のジャンプのように。名前が一緒なら、それだけで同一視されるものだ。
内容がいかにかけ離れていても、それはたいした問題じゃない。器が大事なのだ。


雨なのですることがないのか、イザークとスレンダーは二人で将棋をしていた。
この二人は妙に仲がいい。
覗き込むと、イザークの王は敵陣に切り込んでいた。無謀きわまりない。
腰抜けにはできない戦術だ、とイザークは威張っていた。しかし、どう考えても無茶な戦術だった。


289 名前:三月二十五日 :03/09/20 03:47 ID:???


暫くして、歌番組に飽きた私は、自室に戻るとノートパソコンを起動した。
アンケートの募集期間はまだまだだが、コンスタントに読んでおかないと、つぎの雑誌作りに生かせない。
なんせ4日後には新しい雑誌を出すのだ。暇があれば情報をいれておく必要がある。
最近はダウンロード数もかなりの量になっている。やはりネットの力は偉大だ。儲けはあまりないが。
表紙と最初の数ページを無料で読めるようにしたのも、正解だったようだ。
私はホームページを開いて、管理人用のパスワードを打ち込んで、アンケート結果を表示した。
そこにはホームページのフォームから第五号の感想が既に沢山届けられていた。
これを読むのは編集者にとって楽しみのひとつだ。
やめろ、などの言葉もあるが、励まされるとやはり作っているほうとしては嬉しいものだ。

一番参考になるのは、感想のところだ。人の感性とは実に多種多様であることがわかる。
片方にはあぁいった作風がうけ、もう片方はあぁいうのは大嫌いだという。
そのなかで最も公約数の広い落としどころをみつけるのが、よい雑誌をつくる編集者のコツだ。
私は、ノートを広げて、アンケートのよい意見をピックアップしていった。

(俺の関係シリーズの続投希望が多いな。イザークに話してみるか・・)
そんなことを考えながら私は、次々とアンケートをクリックした。


そして、その次にみたアンケートに書かれてある内容に、私は酷く混乱することになった。


其れは最初は何の変哲もない普通のアンケート回答のように思えた。
他の読者と変わらず1~6問のアンケート回答が丁寧に書かれていた。多少辛口だが、的を得ていた。
私は、メモをとりながら其れを読み進めた。が、六番目のところで、はたと手をとめることになった。
そこにはこう記されていた。




問6  最後に本誌への感想をどうぞ。

 「2年前の同雑誌に比べると、多少質が落ちますが期待しています。
  あの時の最後の二人による最終号は最高でした。最後シャアが打ち切られるとは思いませんでしたけど。」




290 名前:三月二十五日 :03/09/20 03:56 ID:???
一瞬何を書いているの理解できなかった。私は、首をひねる。
2年前?同雑誌?この雑誌の企画は今回が初めてじゃないか。
この読者は何か勘違いしているのだろう?

私は、マウスを持つ手を止めて、暫く考えた。アンケートをもう一度頭から読み返す。
いたずらではない。他の所はしっかり丁寧に書かれているし、わざわざこんなことを書きこむ必要性がない。
と、なるとこれは事実なのだろうか。

>シャアが打ち切られるとは思いませんでしたけど

やけに細分的なところがリアルだ。シャアが打ち切られた?2年前に?連載で?
私は、背中に嫌な汗が出るのを感じた。何かがゾワッと身体を通り抜けていく感覚だった。
生ぬるいどろりとしたものが、私の背中にまとわりついてくる。それは実に厭な感覚だった。


これは本当のことかもしれない。
もう一度ゆっくりとメールを読みなおして、私は、ある種の確信を持った。おそらく、これは真実だ。
私は軽く唇を噛んだ。はがゆかった。
何かが起こっているのだ。いや、起こっていた、といったほうが正しいのか。じゃあ何が起きた?
わかるわけがない。判断材料が圧倒的に足りない。・・落ち着け。
ポケットからよれよれになったラッキーストライクを取り出して、ライターで火をつける。
肺の奥底まで煙を入れてしまうと、少し気分がおちついた。ゆっくり考えなければいけない。
外では相変わらず雨が激しく降っている。

私は仮定してみる。
2年前に会長は雑誌を発行した。そして、最終号まで発行した。
システムはおそらく今回と同じ打ちきり制度。何号まで発行したかはわからない。だが、確かに雑誌があった。
ここまではいい。だが、そう仮定すると当然いくつかの疑問がでてくる。
仮にそうだとするとそのときの編集者は誰なんだ?そいつは何故今回を担当していないんだ?
何故、会長はもう一度この雑誌を発行する気になったんだ?そして・・

―――なにより、どうして会長は私にこんな大事なことをおしえてないんだ?


291 名前:三月二十五日 :03/09/20 04:14 ID:???

謎が多すぎる。私は思う。
深い井戸のように、奥は何も見えない。一寸先もみえない、自分の体でさえも見えないほどの暗闇だ。
私はそのなかで細い吊り橋の上を明かりも無しに、とことこと歩いている。
吊り橋を一歩踏み外せば足元には巨大な虚空がぽっかりと口を開いている。
それなのに私は何も考えずに、その通路を歩く。踏み外せば死ぬのに、私は其れに気がついていないのだ。
後ろから、誰かがくすくすと私を指差して笑う。神経に障る笑い声だ。無知をあざけ笑う男の声がする。
「おい・・あいつをみろよ。頭おかしいんじゃないのか?」「おいおい笑っちゃ悪いよ。あいつは何も気がついちゃいないのさ。」
そんな会話が聞こえてくる。その誰かの笑い声は次第に大きくなる。鼓膜を破るほどに大きくなったところで、私は耐え切れなくなる。
だが、私が振り向いた時にはそこには誰もいない。ただ全くの暗闇が広がっているだけだ。
私は、また歩く。

そんな感じだ。何もわからない。だが、物事は進んでいく。
今は一体何合目まできているんだ?

私は、いらただしげにパソコンの電源をきる。
差出人に連絡をとって確認したかったが、フォームに投稿する、という形をとっているので、メールアドレスがわからない。
IPはわかるがそれから探し出すのは困難だ。差出人を突き止めることはできない。

ただちに会長に連絡して尋ねようとも思ったが、やめた。
仮にこれが、真実だとしても、決してイエスとはいわないだろう。しらをきるに決まっている。そういう人だ。
それに問い詰めて白状するようなら、はじめから私に言っている筈だ。いわなかったということは知られたくなかったってことだ。
なぜか?しられてはまずい理由があった。
じゃあそれはなにか?わからない。
この雑誌にはガンダムの表現媒体の拡大のほかに、何か本当の目的があるのかもしれない。
そして、其れは赤棟とも何か関係があるのかもしれないな、と私は思った。二つはリンクしている?繋がっているのか?
わざわざ同じ敷地内にあるのだから、何か意図することがあると考えるのが妥当だろう。

・・だが、とりあえず、雑誌の事はもうちょっと確信がもてるまで置いておこう。長い熟慮のすえ私は、そう結論付けた。
赤棟の方から探っていくことにしよう。会長には気づかれないように、こっそりと。

さて、となると誰か赤棟に詳しい奴はいなかったかな。と考えたところで、すぐに私はイザークを思い出した。
そうだ、明日にでも彼に聞いてみるか。それがいいだろう。
其の時、大きな雷が鳴って、私は反射的に外を見た。
大粒の雨が、まるで、何かの予兆のように激しく間断無く地表に降り注いでいた。
その音を聞きながら、私は、微かに唇を舐めて笑った。
単なる雑誌の編集より、このほうが、私にはあっている。そう思うと、無性におかしかった。
                                                     (三月二十五日 終了)


292 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/09/20 04:17 ID:???
リアルタイムキター

お疲れ様です、ついに展開に進展が。。
シャアをうちやぶったのはだれだろう、、妥当な線ではアムロだけど。。

293 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/09/20 09:04 ID:???
意外と早くキタ━━━((゚(゚∀(゚∀゚(゚∀゚)゚∀゚)∀゚)゚))━━━!!!!

イザーク (スレンダーの王の目の前に王を進め)「王手」
スレンダー 「…(パチッ)」

とかやってそうだなオイ!

294 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/09/20 12:34 ID:???
「あの血痕」?「屋上」?
引っ張るなぁ・・・

295 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/09/21 00:13 ID:???
>あの血痕

>>284が殺されたのか・・・

296 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/09/21 19:25 ID:???
あげ

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