<< previous page | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 | next page >>

第二回天下一武道会 第六章

[ 第二回天下一武道会 ]

第二回天下一武道会 第六章「本当のニュータイプ、鎖、血、そして重力」

828 名前:投稿日: 02/11/08 14:23 ID:???
第六章     「本当のニュータイプ、鎖、血、そして重力」


アムロはララァと話していた。
アムロはガンダムの中で。
ララァはエルメスの中で。
2人の精神は宇宙空間に広がっていた。


「ララァなら何故戦う?」 
「シャアを傷つけるから。」 
「なにぃ?」 
「シャアを傷つけるいけない人。」 
「そ、そんな、バカな。」 
「そのあなたの力が示している。あなたを倒さねばシャアが死ぬ。」 
「シャア。そ、それが。」
「あなたの来るのが遅すぎたのよ。」 
「遅すぎた?」 
「何故、何故今になって現れたの?」 
何故、何故なの?何故あなたはこうも戦えるの?あなたには守るべき人も守るべきものもないというのに。」 
「守るべきものがない?」 
「私には見える。あなたの中には家族もふるさともないというのに。」 
「だからどうだって言うんだ?」 
「守るべきものがなくて戦ってはいけないのか?」 
「それは不自然なのよ。」 


ガンダムがビットをかわす。
ガンダムがビットを撃ちぬく。
ガンダムがビットをかわす。
ガンダムがビットを撃ちぬく。
ガンダムが・・・


829 名前:投稿日: 02/11/08 14:24 ID:???


アムロはそこで目を覚ました。
仕官部屋の天井が見える。無機質な天井。
「また・・・・この夢か・・」
そう呟いて、上体を起こす。心臓の動悸が聞こえる。
鼓動が太鼓のように激しく鳴っている。息切れもする。
この夢を今まで何度みただろう・・その度にこうして夜中に目を覚ますことになる。
アムロは薄暗い部屋(非常灯が一つ明かりをひっそりとともしている)をボンヤリと眺めた。
ララァこそ・・本当のニュータイプだったんだ・・そう考える。
僕なんかとは違う。精神的に、そして本質的に。
僕はただの殺人マシーンだからな。そう自嘲する。


ふと枕もとの時計に目をやる。まだ寝てから二時間しかたっていない。
そしてアムロは自分が酷く汗をかいていることに気が付いた。
Tシャツが汗でべっとり張り付いている。
「着替えないとな・・」
アムロはそういうと二段ベッドから降りた。階段の手すりに手をやる。
途中階段を降りるときに下のベッドを見たが、そこにシャアの姿がないのを疑問に思った。
僕が寝るときは確かにここで熟睡していたはずだが・・おかしいな・・・まぁいいけど。アムロはそう呟いた。
降りると、とりあえず汗でべたついているシャツを脱ぐ。
常備されているタオルで上半身を丁寧に拭く。ついでに冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し半分ほど飲む。
ちょっと空腹を感じたのでクラッカーを何枚かとりだし、ゆっくりと食べる。
一緒に置いてあったチョコレートも取り出し、少しかじる。甘味が口の中に広がっていく。
そこでアムロは深いため息をついた。


830 名前:投稿日: 02/11/08 14:29 ID:???

アムロはまだあまり意識がはっきりしてなかった。
なんというか精神がうまく肉体にはまり込んでないというか、馴染んでないというか、そんな感覚だ。
一年戦争・・・ララァ・スンの夢を見るといつもこういった感覚におちいる。
精神だけ宇宙空間に飛散しているというか、漂っているというか、そんな表現がしっくりくる。
しばらくすれば、うまく落ち着いてくるのだが。精神の暴走が収まるにはもう少しかかる。
地球にいた頃・・あの頃はこんな夢を頻繁に見ていた。アムロはボトル内のゆらめく水を見ながら考えに沈む。
だから宇宙が怖かった。ララァに引っ張られそうで。
それで地球にいたんだ。連邦の籠の鳥でもかまわなかった。地球にいられるのなら。
重力が僕の魂を地上に縛り付けてくれていた。しっかりと、きつく、強く。ボルトで、紐で、ロープで。
まるで地獄につながれたルシフェルの鎖のように。


だが今、僕は宇宙にいる。
この・・人が生きていく上で限りなく不安定な空間。肉体的にも精神的にも。
いや・・不安定というよりは不自然といった方がいいのかもしれない。
不自然・・・アムロはまた先程の会話を思い出す。

「守るべきものがなくて戦ってはいけないのか?」 
「それは不自然なのよ。」 


不自然か、第一人が殺しあうこと自体不自然だよな・・
そういい、ララァの言葉を考える。


831 名前:投稿日: 02/11/08 14:34 ID:???


不自然だな・・確かに。
そして目を閉じる。宇宙の星を思う。
人は宇宙に出るべきではなかったのかもしれない。
地球なしで生きられると思うのは、人の傲慢かもしれない・・
人の・・・


そんな事があたまによぎる。駄目だ。こんな事考えてなんになるというんだ。
シャアの存在が、安定していた、もしくは不自然に安定していると思い込んでいた様々な問題を揺り動かしている。
彼はなんのために、僕の前に姿をあらわしたんだ?
そこにはなにか理由があるはずだ。必ず。
そしてそれにまだ僕は気がついていない。判っていない。
アムロは手に持ったボトルを眺め、中に漂っている水を眺める。
水はアムロに何かを訴えかけているかのように揺らめく。
右手に持っているチョコレートをかじる。ため息をつく。


頭を振って今のことだけを考えることにする。他のことを考えるのはひとまず止める。
この艦が出発して、およそ三週間がたった。敵はあれ以来襲ってこない。
順調に行けばあと2ヶ月と少しで任務が終わるはずだ・・・
あと2ヶ月だって?・・アムロは考える。



このまま精神だけでなく肉体も宇宙空間にいたら僕はどうにかなってしまうんじゃないのか?
ここには重力という「クサビ」はないんだぜ、おいアムロ、お前はやっていけるのか?


832 名前:投稿日: 02/11/08 14:35 ID:???








833 名前:投稿日: 02/11/08 14:36 ID:???

スレッガーはまた天井を眺めていた。相変わらず無機質だ。
だがスレッガーはその無機質さの中にある種の好感を持つようになっていた。
無機質?オッケーじゃない。少なくともこれを眺めているときは何も考えなくて、頭を空っぽにしてりゃいいんだ。
スレッガーは天井を見るのに飽きると横で静かに寝息を立てて眠っているシーマに目をやった。
そして昨日の行為を思い出した。
裸で眠っている彼女はとても美しかった、スレッガーはその髪をそっとなでた。
女と寝るのは久しぶりだが、やはりいい。
生きている実感を味わえる。
昔は退屈しのぎに色んな女と寝たもんだが、今考えると馬鹿をしていたものだ。
退屈が何より嫌だったんだな、俺は。
そう思いながら昨日のシーマとの会話を思い出す。



「・・・だから、あなたに加わって欲しいのよ。スレッガー。」
「あぁ、いいぜ。俺は別にかまわない。」
「本当に?さすがスレッガー。あたしが認めただけあるよ。」
「よしてくれ。そんな言葉は。俺は別にあんたのために入るわけじゃないぜぇ?」
「フフフ・・そうだね。あんた本当にいいオトコだよ・・」
「シーマ・・お前はずっとそういう風に・・イーヤ・・忘れてくれ、なんでもない」
「フフフ・・あんた本当に変わってるねぇ・・」




834 名前:投稿日: 02/11/08 14:37 ID:???


スレッガーはタバコが吸いたくなった。
しかし士官室は禁煙である。吸ったのが見つかれば給料4分の一カットだ。
別に四分の一カットされようがそんなに困らないが、スレッガーは吸うのを止めた。馬鹿らしい、たかが煙じゃないか。
代わりに枕もとに置いてあったクールミント・ガムを手にとる。
二枚いっきに取り出すと、まとめて口に入れた。一枚だけだと噛んだ気がしないのだ。
二枚のガムを一緒に口に含めばさすがに噛み応えがある。ミント味が口の中 全体に広がった。
ものを噛む行為をスレッガーは嫌いではなかった。
口に何かを含んでいるのは、彼に生命をリアルに感じさせた。

「まぁ、なるようになるさ」


スレッガーはそう呟くとシーツの海に再び身を沈めた。
隣でシーマの寝返りをうつ気配を感じながら、スレッガーは再び眠りの世界にはいっていった。





835 名前:投稿日: 02/11/08 14:37 ID:???






836 名前:投稿日: 02/11/08 14:39 ID:???



アムロは身体が冷えてきたのを感じて、身震いをした。
気が付いたら結構な時間考え事をしていた。
上半身はまだ裸だった。汗はすっかり引っ込んでいた。
体調を崩したら大変だ。戦場では体調不良など言い訳にはならない。
敵がアムロの体調が悪いのを考慮してビームライフルを向けないなんてことはありえない。
死ぬのは自分なのだ。
誰も助けてはくれない。



慌ててアムロはなにか着る物を探した。部屋は薄暗くてあまり見えない。
それでもアムロは明かりをつける気にはならなかった。
洗濯していた洗いざらしのTシャツをなんとかみつけ、とりあえずそれを着る。
そして先程食べかけていたチョコレートを全部食べてしまう。
残りのクラッカーをまた元の場所に戻す。
もう一度ミネラルウォーターを口に含み、いっきに飲み干す。まだ多少意識がはっきりしないが、さっきよりは大分ましだ。
今度はララァの夢をみらずに眠れたらいいがな、アムロはそう思った。


837 名前:投稿日: 02/11/08 14:40 ID:???

だが意識の深層の中に、ララァの事が組み込まれているかぎり決して逃れられることはないだろう。
アムロには判っていた。ララァの亡霊が僕から消えることはない。


それは影のように僕についてくる。
光が当たれば当たるほど、その存在はくっきりと浮き出てくる。背後に、べっとりと。


そしてそのたびに思う。
僕は一体いつまでこの影を連れて生きていくのだろう。
朝が来て朝が終わり、昼が来て昼が終わり、夜が来て夜が終わったとしても彼女は僕から離れない。
いや・・彼女を縛っているのは僕の方なのかもしれない。
鎖で彼女を縛り、思い出として意識の深層に幽閉する。
まるで人質の様に。















そして象徴のように。


838 名前:投稿日: 02/11/08 14:43 ID:???




そのときドアが静かに開いた。
アムロは顔を挙げる。
かすかな異臭を感じる。ひどく違和感のある・・だけど馴染みのある匂いだ。
アムロはドアに視線をやる。
そこには血まみれのシャア・アズナブルが静かに立っていた。
その姿を見たときアムロは、頭の中で運命の車輪が音を立てて回転しだすのを確かに聞いた。
それは静かに確実にゆっくりと弧を描きながら回転していく。
そのとき第二戦闘配備の警報が艦内に響き渡った。
だが、今のアムロにはそれがまるで遠くで響いているように感じた。実感として聞こえない。
シャアも何事もなかったかのように、まるであの警報が聞こえてないかのごとく、ゆっくりと部屋に入りドアを閉める。
そしてこちらを見る。
シャアの口唇がゆっくりと開き、声を発するのをアムロは黙って見ていた。





そして艦内で彼らがかわす会話は  このときが最後になる。
三十分後に士官室に響くことになる一発の銃声がそれを証明していた。


                                                  
                                                     [第六章] 完 


839 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/11/08 14:50 ID:???
血まみれだよヽ(TДT)ノウワァァン!!ドウナッチャウンダヨォ!!

1氏乙です。読み応えあるなぁ。何故かお腹が減りました(藁


840 名前:投稿日: 02/11/08 15:29 ID:???
>>825
そうですね・・
けどそれだと、立ててくださった方に申し訳ないですね・・
こんな話のために・・何人の方がこれを読んでくださっているのかわかりませんし・・
新スレ立てていいほど需要があるのか正直不安です。

>>827
有り難うございます。
ハリー・オードス見させていただきました。
ハリーって18歳だったのですね・・知らなかった。若いなぁ。


>>839
クラッカーを食べることをお勧めします(笑)
水でもいいですが、個人的にはホットコーヒーとセットがお勧めです。
砂糖とクリームはお好みで・・幸せな気持ちになれますよ~



次の更新は明日の夜の予定です。
七章ではなくて、ある幕間が入る予定です。ハァハァネタはもう少し先になりそうです。すいません。
感想お待ちしています。それでは・・







841 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/11/08 16:23 ID:???
何が起きたんだろう・・・謎。


842 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/11/08 17:43 ID:???
続き気になるよハァハァ
>新スレ立てていいほど需要があるのか正直不安です。
んなーこたーない!立ててよし!


843 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/11/08 18:36 ID:???
今日のは重かったなぁ
明日に期待


844 名前: ロウロン 投稿日: 02/11/08 19:43 ID:EhuWEEhb
うおおお!!最高に次に期待!!


845 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/11/08 22:56 ID:???
ギャグ展開もいいけどシリアスもイイ!!
>>1さんの文才にハクシュ!


846 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/11/09 00:00 ID:geevKC75
正直、面白すぎる・・・・。


847 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/11/09 00:40 ID:???
毎日楽しみにしていまつ!!!!


848 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/11/09 02:31 ID:???
今回のエンディングは「beyond the time」でどうか?


849 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/11/09 02:32 ID:???
天下一の頃から俺の日課になっている。
スレタイが良ければ祭りになってる。
名スレ、故に是非次スレ!


850 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/11/09 04:47 ID:5lfa44Vz
最強は超ベジット。


851 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/11/09 08:39 ID:zdoljE8T
ドモンカッシュvs熱気バサラ


852 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/11/09 13:05 ID:???
んー新スレたてんで途中で終わったら嫌なので新スレ立てましょうよ
書き込みのない糞スレ再利用って手もあるけどこんな名スレだから
パート2立ててほしい


853 名前: カンリニン 投稿日: 02/11/09 18:31 ID:???
保守age


854 名前: カンリニン 投稿日: 02/11/09 18:32 ID:GBv1/50o
上がってなかった(糞


<< previous page | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 | next page >>