第二回天下一武道会 エピローグ (1)
[ 第二回天下一武道会 ]
190 名前:1 :03/02/24 16:13 ID:???
少女はそっと目を覚ます。
頭が、ぼうっとしている。昨日はあまり寝られなかったからその所為だろう、と思う。
カーテン越しに、淡い朝の日差しが入り込んでくる。
遠くで、一日の始まりを告げる鶏の鳴き声が聞こえる。それとは別に小鳥のさえずりも聞こえる。
幸せそうに鳴いているその声を聞きながら、少女は、自分がまだ、夢の中にいるような気がすると思う。
どんな夢を見ていたかは思い出せない。けれど、どこか悲しい夢だったという確信が少女にはあった。
少女は、ベッドからゆっくりと上体を起こす。
そして、外気の、肌に染みるような寒さに少しだけ身を震わせる。
そのおかげで、少しだけ、頭がはっきりとしてくる。
エピローグ 「 in the radio 」(前編)
191 名前:1 :03/02/24 16:18 ID:???
ここの冬は長く、寒さも辛い。
まるで永遠に続くかと思われるような寒さだ。雪もかなり降る。
もっとも今は、もう冬ではなく、春の始まりといっていい季節だ。初春。
冬の間、仮死状態にあった木々や、植物、動物が息を吹き返す季節。
そこには冬の間の憂鬱を取り払おうと動く生命の胎動が在る。
けれど、寒さの本番は過ぎたとはいえ、やはり朝の冷え込みは厳しい。
寝室には、特に暖房器具はないのでわからないが、朝の気温はひょっとすると氷点下くらいかもしれない。
それぐらいこの地方は冷える。少女の吐く息は、純粋なまでに白い。
しかし、少女は特に辛いとは思わない。
物心ついたときからこういった生活には慣れているし、なにより朝のこの感覚は嫌いではない。
そこには何処か神聖な気持ちに人を落とし込む何かがあると少女は思う。空気の張り詰めた厳粛な時間。
それは夜の間に妖精が構築してくれて残しておいてくれた時間のような気さえする。
そして太陽が昇ると共に薄れていくもの、強烈な日差しが奪い去っていくものだ。
192 名前:1 :03/02/24 16:22 ID:???
少女は、淡いベージュ色のカーテンを開けると、窓を微かに開ける。
途端に、冷たい風がふぅっと入ってくる。その風の中で、そっと呼吸をする。
その外の生命力に溢れている空気を、感じる。
少し湿ったような匂いがした。もしかしたら今日は少し雨が降るかもしれない。
だとすると、洗濯は早くしなければいけない、といった現実的な思考が少女を捉える。
もう頭は完全に覚めていた。元々、寝起きはいい方だ。
もう一度、新鮮な空気を肺に入れる。
そして、すぐに窓を閉める。
あんまり外気が入ると、隣のベッドでぐっすり寝ている幼い男の子を起こしてしまう。
少女は、ベッドからそっと出ると、上に軽いカーディガンを羽織る。
そして隣の幼い子を起こさないように注意して静かにドアまで行くと、寝室を出る。
193 名前:1 :03/02/24 16:32 ID:???
静かにドアを閉めると、ちょっと狭い廊下を抜けて居間に出る。
廊下を通るとき、ふと気になって隣の部屋のドアを開ける。
まだ薄暗い室内。朝独特の気だるい空気がそこにも同じ様に在る。
雑然とした部屋の中に、少女は入る。無造作に置かれた球状の機械が修理中らしく、床に置かれていた。
中から色々なコードや、チップが出ているが、少女にはこういったものは良くわからない。
ただ、馴染みのあるこの機械が早く直ればいい、と思うだけだ。
床に散乱しているドライバーや工具類を踏まないようにして、もっと中に入ると、辺りをもう一度見渡す。
机の上には、ノートパソコンが置かれている。電源は入っていない。
ペンが一、二本無造作に置かれている。インク瓶の蓋が少し緩んでいる。
何かを書いていたらしい、と少女は思う。丸められた紙が、ゴミ箱に沢山入っていた。
ベッドのほうに少女は、目をやる。
少年は寝ているようだった。枕に顔を埋めてぐっすりと熟睡しているらしい。
その様子に、少女は安心する。ここにちゃんと少年がいることを確認したかったのだ。
少年を起こさないようにそっと部屋を出ると、ドアを閉めて再び廊下に出る。
そして今度こそ、居間にでる。
194 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/02/24 16:33 ID:???
- 少女向け小説みたいな文体だな、気持ち悪い
195 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/02/24 16:34 ID:???
- つか今、書いてんのね
邪魔してゴメンよ
196 名前:1 :03/02/24 16:35 ID:???
居間の床に寝ていた犬が少女に気がつき、尻尾を振って近寄ってくる。
少女はその犬の頭をそっと撫でる。
犬は気持ちよさそうに目を細める。
頭を撫でながら、辺りを見渡す。いつもと変わらない部屋だ。
197 名前:1 :03/02/24 16:36 ID:???
彼らが起きる前に朝食の準備をすることにする。
もっとも食事といってもそんなに手の込んだものは作らない。簡単なものだ。
少女は、戸棚から食パンを取り出すと、包丁で適度な厚さにスライスする。
そしてそのパンにバターを塗って、軽くトーストしておく。
昨日、近くに住む知り合いからもらった新鮮な卵をボウルに割る。
フライパンを熱して、そこに卵をいれて、スクランブルエッグを作る。
食パンと卵の焼ける匂いが、辺りに漂って、食欲をそそる。
程よく焼けたところで、皿に移す。
更に、チーズの塊を取り出して、それを適当な大きさに切って、皿にトッピングする。
新鮮な牛乳をコップにうつして、用意する。
トマトを薄切りにして、ちょっと塩を振ってサラダの代わりにする。
これで終わりだ。
シンプルでスピーディな朝食。
198 名前:1 :03/02/24 16:40 ID:???
後は、少年たちが起きてくるのを待てばいい。
少女はそれを素朴な木の質感のあるテーブルの上に並べていく。
簡単な朝食を並び終えた頃に、予想どうりに少年と男の子が起きてくる。
二人ともまだ眠そうな顔をしている。
軽く朝の挨拶を交わす。いつもどうりの風景。
そして三人は食事をする。
男の子が、今日見た夢などを元気よく話すのを聞きながら、ゆっくりと食事をとる。
食事が終わる頃に少年が、今日午前中に、街に買出しにいってくると話す。
食料はなるべく自給自足をしているのだが、足りないものはどうしても出てくる。
完全な自給自足というのは、この現代では、ほとんど不可能に等しいのだ。
だから、おおよそ隔週ごとに少年が買出しに行くことになっていた。
少女は頷いて、買ってきてもらいたいものを紙に書いていく。
その間に食事を食べ終わった男の子が、犬と遊ぶために外に出て行く。
少女は、その後姿に、あまり遠くまで行かないように注意する。
199 名前:1 :03/02/24 16:49 ID:???
使った食器を二人で片付ける。
その後、少年は、することがあるから、といって部屋に戻った。
おそらくあの機械の修理をするんだろう、と少女は推測した。
少女は、起きてすぐに考えたように、溜まっていた洗濯物を持って、家を出る。
家のすぐ側には、小さな川が流れていて、洗濯ができるからだ。
空を見ると、多少雲は出ているもののすぐに雨が降ることはなさそうだった。
太陽は多少顔を出していて、地面に恵みを与えている。
朝のまどろみの神秘性を取り払い、力強い生命を与えていく。
川の水は、冷たいけれど、とても澄んでいる。水量も多い。
おそらく雪どけの所為だろうと少女は思う。
少女は、川の前で、そっと膝をつくと、汚れたシャツ等を洗っていった。
洗剤といったものはほとんど使わない。
自然に優しい石鹸を少しだけ使う。
後は、丁寧に洗えば大抵の汚れは落ちる。もっともその多少の労力を惜しむ人も多い。
勿論、少女はそんな労力を惜しむようなことはしない。
川の水で、ゆっくりと一枚一枚綺麗に洗っていく。
200 名前:1 :03/02/24 16:56 ID:???
洗濯物を全て洗い終えて、少し休憩をする。
かなりの量があったので、結構な時間がかかってしまった。
最近、ずっと天候が悪いので、ずいぶんと溜まっていたからだ。
少女は冷え切った身体を温めるために、ミルクを少し温めてカップに移して飲む。
いままで部屋でなにかをしていたらしい少年が出てきて、少女に一言二言話す。
少女は少年に先程書いた食料品などのリストの紙をもう一度確認してから渡す。
少年はその手紙を受け取るとちらりと眺めてポケットに入れた
そして、それじゃ、と言って玄関のドアに手をかけた。
いつもの帽子を被って、出て行く後姿を少女は椅子に座ったまま見送った。
どこか、胸騒ぎがした。
201 名前:1 :03/02/24 17:04 ID:???
その後姿に、少女は漠然とした不安を覚えた。
少女の頭に数ヶ月前に、少年が今と同じ台詞を言って出て行ったことを思い出される。
あの時も、少年は少しだけ街に行ってくるといいのこして、出て行った。
そして一ヶ月以上帰ってこなかった。
出稼ぎに行ってもらったと後で近所の人から聞いたが到底信じられなかった。
少女は、自分に何も言ってくれなかったことにショックを隠せなかった。
そして帰ってきてからの少年はどこか影を持っているように見えた。
表面的には、以前と変わらず、いやむしろ以前よりも優しく自分に接してくる。
けれど、どこか違和感が存在している。
以前と比べると、陰があるというか、ぎこちなさが微かに残るというか、そんな感じだ。
少女自身にもうまくは説明できないけれど、見えないラインが出来ていた。
どこか違っている。
少年は一人でいるときに物思いに沈むことが多くなった。
何を考えているのかはわからないけれど、おそらく一ヶ月の間にきっとなにかあったのだろうと思う。
自分に話すことができない何かを孕んでいるのだと思うと、少女は哀しくなった。
ミルクを飲み残す。
202 名前:1 :03/02/24 17:09 ID:???
少し遅めの昼食を作る。
少女は、サンドイッチを作ることにする。
チーズと羊の肉を、バターを塗ったパンに挟む。
パンは耳の部分にまでしっかりとバターを塗るのがコツだ。
朝食の時と同じく、トマトを薄くスライスしたものとチーズをサンドしたものの二種類。
トマトとチーズの絶妙なバランスが大切だ。バランスを間違えると、これは美味しくない。
出来は上々だった。
けれど食欲はなかったので、自分の分を、戻ってきた男の子に食べてもらう。
食べた後、少しだけ椅子でうたた寝をする。
203 名前:1 :03/02/24 17:10 ID:???
夕方になる。
少年は帰ってこない。
夕食。
にんじんとジャガイモと羊肉のクリームシチューと、パン。
少年はいない。
遅すぎる、と思った。
二人で静かな夕食を取る。
204 名前:1 :03/02/24 17:15 ID:???
幼い男の子を寝かしつけた後、少女はそっと外に出てみる。
外は既に暗闇に包まれている。
空を見上げる。
星は出ていない。月も出ていない。まったくの、黒、だ。
分厚いどんよりとした雲が、沈鬱そうに、世界を覆っている。もうすぐ雨が降るのだろう。
その雲が、月や星から私たちを隔離させている、と少女は思った。
地球から、宇宙に思いをはせることを困難にさせている。
そんなことをボンヤリと考えながら、少女は帰ってこない少年のことを思う。
何か用事が出来て、一晩街の方で泊まってくるだけだと、自分に言い聞かせる。
風が強くなってきた。少女は身震いする。
けれど、その身震いが、寒さから出たのか、少年がいなくなる喪失感の恐怖からでたのか判らなかった。
その時、埋めたい滴が顔にポツリ、と落ちてきた。
雨が降り始めたようだ。
風邪を引くわけにはいかないので、家に戻る。
205 名前:1 :03/02/24 17:18 ID:???
考えていても仕方ないので、もう眠ることにする。
雨の次第に強くなる音を聞きながら、少女はベッドに入った。
206 名前:1 :03/02/24 17:23 ID:???
少女が目を覚ましたとき、外はどうやら大雨が降っているようだった。
どのくらい寝ていたのだろう、と少女は思った。
外の暗さからすると、まだ夜は明けていないらしい。
207 名前:1 :03/02/24 17:26 ID:???
少女はベッドから上体を起こす。
激しく地面を打つ水音がする。雨は、あの後かなり強く降り続けているらしい。
遠くで落雷も聞こえた。一瞬、真っ暗な室内に閃光が差し込み、また消える。
もの凄い雨だと少女は思う。まるで嵐のような雨と雷だ。
これだけ強い雨が降ったなら雪をもう全て溶かしてしまうかもしれない。
しかし、少女が目を覚ました直接的原因は、雨の音じゃない。
人の声が聞こえたからだ。
それも、よく知らない男性の声。決して少年の声ではない。
今夜は少年が、帰ってきていないから鍵はかけていなかった。
208 名前:1 :03/02/24 17:41 ID:???
少女はゆっくりとベッドから降りる。
そしてそっとドアを開けて、声のする方・・居間に向かう。
誰がいるのか確認しなければいけない。
少女は廊下からそっと居間をのぞく。
予想に反して、誰かがいるということではなかった。
その男の声はリビングのテーブルの上に置かれた古ぼけたラジオの音声だった・・以前に少年が作ったもの。
スイッチが入っている。
ラジオの、音。
『ーということで地球連邦政府の正式見解はまだ発表されていません。もう一度繰り返します。
政府高官殺害事件およびその他のテロ活動の首謀者と思われ、指名手配されていた重要人物である
ミライ・ノア被告はニュー・ホンコン現地時間20:00に捜査官によって身柄を拘束されました。
あるジャーナリストの情報では政府の極秘艦がこのテロ組織により1隻強奪されたと可能性もあると指摘しています。
政府はこの事実を隠蔽しているというのですが、これについては政府は全面否定しています。
何故、突然に彼女の居場所がわかった、情報源はどこなのか、などその理由は今のところ不明です。
ミライ被告は今後、裁判にかけられることになるでしょうが、死刑はほぼ確実だと思われます。
それでは次のニュースです。数ヶ月前に地球全体で見られたオーロラの超自然現象についてある科学者はー』
209 名前:1 :03/02/24 17:43 ID:???
少女はラジオをあまり聞かないのでわからないが、どうやらニュースを延々と伝える番組らしい。
どうしてこんな時間にスイッチが入っていて、流れているのか不思議に思った。
ふと、足元に何かが当たった。
少女は、真っ暗な足元に目を凝らす。
どうやら紙袋のようだ、それを拾い上げて中を覗き込む。
紙袋の中には、少女が頼んだ食料品や生活雑貨などが入っていた。
そこで少女は玄関のドアがかすかに開いていることに気がついた。
どうやら少年は帰ってきているらしかった。
少女は、その紙袋をテーブルの上に置くと、少年の寝室に向かう。
ラジオはそのままにして置いた。
210 名前:1 :03/02/24 17:53 ID:???
少年の部屋のドアをあける。
だけど、そこに少年の姿はなかった。人気はそこにはない。
少女は、おずおずと中に入る。
やはり真っ暗だ。けれど、何か机の上にモニターの光があった。少女は近寄る。
足元に在ったらしい機械を蹴飛ばしてしまった。慌てて元に戻す。
キチンと整理された机にノート・パソコンと、一通の封筒が置いてあった。
パソコンには電源が入っていて、何かのデータが映し出されていた。もっとも少女にはそれが何かはわからない。
封筒を少女は、見る。だが、この暗闇では何も見えない。
モニターの光りを頼りに、何とかあて先を見る。
キャスバル・・・レム・ダイクン。
どうやら、この人物宛ての手紙のようだ。住所はかかれていない。
この名前に少女は覚えがあった。最近、ラジオに良く出てくる名前だ。
その人物が少年と何の関係があるのか不審に思った。
少女は中身を見ようとして、一瞬封筒に手を伸ばすが、思い直してやめる。
それは、してはいけないことだと思う。
だけど、少女はその中身を見るという欲求に駆られる。
倫理的な面は少女を押しとどめようとする。
が、この中には自分が知りたかったことが書かれているかもしれない、と少女は思う。
それを知ることができるのは今しかないかもしれない。
だから、悪いこととは自覚しつつも少女は中を見る衝動を押えられなかった。
211 名前:1 :03/02/24 17:58 ID:???
封筒の中から手紙を取り出す。まだ封は糊付けされていなかった。
四つ折りに畳まれた西洋紙が、中に入っていた。そしてフロッピーが一枚。
分量は思ったより多い。そしてまだインク独特の匂いがした。
書かれたのは今日だ、と少女は思う。
中身を少女はか細いモニターの明かりを頼りに読む。
雨音は依然激しい。
212 名前:1 :03/02/24 18:07 ID:???
少女が読み終わったのは、それから数十分後のことだった。手紙を持つ手は微かに震えていた。
その震える手で、ゆっくりと手紙を折りたたむと元のように戻す。
鼓動が激しく鳴っている。
心臓の動悸を抑えようと、胸を手で押えるが、もちろん何の効果もない。
読まなければよかった、と少女は思った。
また雷が鳴り響いた。
少年の部屋の沢山の機械類、乱れたままのシーツ、ジャンバーが一瞬光に照らされる。
一つ大きく深呼吸をすると、ベッドに少女は腰をおろす。そして目を瞑った。
ドアを開け放しているので、耳を澄ますとラジオの音が聞こえた。
もっとも外の雨音の所為で、あくまで断続的にだけれど。
ラジオ、雨、ノイズ。
「かつて一年戦・・の英雄で失踪中・・アムロ・レイ大尉が.・・・・テロに参加した・・との嫌疑・・
執事の・・・によると・・およそ三ヶ月前に・・テロの首謀者と・・
これについて元同僚である・・シデン氏は・・・・むしろ・・連邦の・・を・・無視した・・抑圧に問題が・・」
アムロ・レイ、少女は呟く。
213 名前:1 :03/02/24 18:15 ID:???
少女は窓を見る。外の景色を見る。
相変わらずの凄い雨だ。夜に降る雨は、まるで黒く着色さている様に思える。
天の底が抜けてしまったんじゃないかと思えるような滝の雨だ。
こういった雨を見ると、まるで世界は悲しみに包まれているかのような気さえする。
そこには救いがないような気がする。
圧倒的な何かがそこには存在している。決して抗えない運命のような息も吐かせない雨の中に。
そんな事を考えながら、外を眺める。
その時、空に一条の閃光が走り、強い雷光が、辺りを照らした。
その一瞬の光の中で、豪雨の中に傘も差さずに立っている少年を見つける。
少女は目を彼にやったまま、その場で固まった。
少年は激しい雨の中で、覚束ない様子で虚ろに見えた。
だが、一瞬の光の後、また世界は静かな闇に戻る。
少年の姿はまた見えなくなる。
214 名前:1 :03/02/24 18:17 ID:???
少女は、反射的に、玄関に向かう。
そしてそのままの格好で、外に出る。出た瞬間に小石のような雨の粒が少女に激しく当たる。
目を開けて前を見ていられないほどだ。
風も激しい。ずぶ濡れになるのも構わず、少女はとにかく走る。
もっともそんなに距離はない。
少年がいるのは家のすぐ先の部分、川のところだ。
少女が今朝、洗濯をしたときに座っていた辺りのところに少年は立っていた。
びしょ濡れになっている少年は川の水面をじっと見詰めている様だった。
絶え間ない雨の所為で、水面は激しく波立っている。
その隣に少女は立つ。どうしてかは判らないが、少年に触れられなかった。
少年は、隣の少女にまるで気がつかないように、黙って水面を見詰めていた。
何と話し掛けていいのかわからない。少女は一瞬顔を挙げて、また、俯く。
少女もまた水面を見詰めて押し黙った。
215 名前:1 :03/02/24 18:23 ID:???
川の水は、今にも溢れそうなほど増水していた。少女は不安になる。
もしかしたら、水が氾濫してしまうかもしれない、と思ったからだ。
水面に生じた波紋は、広がることも出来ずに新しい波紋によって飲み込まれていく。
そしてその波紋もまた別の波紋に含まれていく。
どのくらいそうしていただろう。身体の芯まで完全に冷え切ってしまった頃だ。
突然、少年の声が聞こえたので少女は驚いた。
それはあまりにか細い声だったので明瞭に聞こえなかった。
だから、少女は、え、と隣の黒い影に聞き返した。
その直後、巨大な落雷がすぐ近くに落ちた。
まるで世界を二つに引き裂くかのような凄まじい閃光だ。
耳を劈くような轟音が、響き渡り空間を震わせる。一瞬地面が震えたように見えた。
それは暗示の様に圧倒的な何かを含んでいる。天と大地を繋ぐ光。
光の繋がり。
また閃光が走った。
少女は反射的に身を震わせる。
216 名前:1 :03/02/24 18:29 ID:???
今度は多少遠くに落ちたみたいだった。だが、それでも激しい音が辺りを震わせる。
すぐにまた雨の音だけが残る。雨がまた全てを流していく。
少女は少年がこちらに目を向けていることに気がつく。少年と視線を合わせる。
少年の瞳は、どこか罪悪感といった感情が含まれている。
手紙の内容を少女は、思い出す。その一節を思い出す。
貴方を恨みます
突然、少年が、少女の身体に手を伸ばすと、引き寄せた。
そして少女を激しい雨から庇うように頭を自分の胸に抱え込む。
そして消え入るような声で一言、僕は卑怯だ、とだけいった。
少女は何も言えなかった。
217 名前:1 :03/02/24 18:48 ID:???
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前半はここまでです。
後半「in the letter 」は、また暫く後になります。
簡潔にならなくて申し訳ありません・・
218 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/02/24 18:57 ID:???
- 乙
改行多すぎ
219 名前:ろうろん :03/02/24 19:22 ID:???
- こんばんは、リアルタイムで見さしてもらいました。
少年>アムロだと思いますけど・・・
少女ってベルトーチカ?小説よんだからそうだと思います。
おつかれです、>>1さん
220 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/02/24 19:46 ID:???
- >>219
尺、嘘、刈るだろ
もう一回読み直せ
221 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/02/24 19:59 ID:???
- ウッソとシャクティかと。後半楽しみにしています。
222 名前:しんみりしすぎて感想を書かなかった人 :03/02/24 23:56 ID:???
- エピローグキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
後半も楽しみにしてます
223 名前:ろうろん :03/02/25 15:40 ID:???
- なるほど、教えてくださってどうもっす。
>>221さん。
224 名前:kanrinin :03/02/25 21:42 ID:R6owRL8j
- 470故、age
225 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/02/26 01:19 ID:???
- >>223
で、>>220は無視か(W
226 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/02/26 13:17 ID:???
- 書き忘れただけだろ
ろうろんは天然っぽいし(w
227 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/02/26 16:25 ID:???
- 尺、嘘、刈るの意味がわからなかったものと思われ
228 名前:kanrinin :03/02/26 23:42 ID:???
- ほしゅるるるる~
229 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/02/27 08:45 ID:???
- 落ちるageる
230 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/02/27 08:46 ID:???
http://comic2.2ch.net/test/read.cgi/anime/1046278589/
231 名前:bloom :03/02/27 08:48 ID:1Al4bfAj
- http://www.agemasukudasai.com/bloom/
232 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/02/27 23:47 ID:???
- >>220
ちゃんと内容を理解してればエピローグにアムロが出てくる
なんて思うわけないよな
そんな間抜けなこと言い出す奴に「面白かったです」なんて
言われても職人さんも素直に喜べんわな(W
233 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/02/28 01:08 ID:???
- >>232
まぁまぁ。マターリしようよ
漏れは結構ろうろん好きだぜ
素直だし(w
234 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/02/28 13:54 ID:???
- 保全
235 名前:kanrinin :03/03/01 01:03 ID:???
- もう少し保全
236 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/01 06:17 ID:tsAhgyUZ
- あげます
237 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/01 20:08 ID:???
- sage保守
238 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/02 00:38 ID:LIKt+ExF
- 保守
239 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/02 17:48 ID:???
- もうそろそろこのスレも終わりか。
1さんも時間がないのか、飽き始めてるのかわからないけど、以前のような書きスピードもないし・・・
まぁでもこの約4か月間すごく楽しかったよ。1さんバイバイみんなバイバイ
240 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/02 19:25 ID:???
- まだだ、まだ終わらんよ
241 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/02 20:20 ID:???
- >>239
まてまて、あわてんな
242 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/02 22:48 ID:???
- >>226=>>233=rouron
243 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/03 12:36 ID:Z6YpoNRJ
- age
244 名前:ろうろん :03/03/03 16:53 ID:???
- >>242さん・・・>>226さんと>>233さんはボクじゃないんですけど・・・
245 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/03 19:25 ID:???
- うざい
246 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/03 22:50 ID:???
- とにかく俺は待つ
このスレと別れるのは後編を読んでからでも遅くない
完結したら、もう一度読みなおそう
完結したら、知り合いのガンダム好きにもこのスレを教えよう
1さん、俺は待ってるよ、いつまでも
247 名前:226,233,241 :03/03/04 11:33 ID:???
- すまん、変にかばったばかりに…
248 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/04 22:10 ID:???
- >>247
そんな事はどうでもいい。
保守にさえなればな。
249 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/05 00:05 ID:???
- 上げ
250 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/05 19:03 ID:???
- どーでもいい、さっさと書けよ
251 名前:ほげら~ :03/03/05 22:18 ID:???
- まぁ、あせるな諸君。
いままで待ったんだから、あと、もう少し待ったところで
どうこうなるもんではない。
252 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/05 22:50 ID:???
- さらっと読んだ、サイコフレームって便利だな
あと時間軸整えないのは激しく読み辛い
速読してたら少し混乱した
でもそれなりに面白かったよ
253 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/06 13:58 ID:???
- sage保守
254 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/06 14:04 ID:???
- >252
一応「錯時法」という名の小説の技法なんだがな。
まあ肌に合わない人はいるかもしれないが、俺は逆に錯時法を見事に使いこなしている、
という印象があって興味深かったな。
255 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/06 20:49 ID:???
- >>254
俺はマジダメだった、その「錯時法」とかゆうの
たまに見かける書き方だけど、なんか不親切な使われ方
大事な所だけに使ってくれよと思った
同時進行のそれほど大した事じゃないのまでそれで描写されたから、無駄に混乱させられた
書いてる人がこれからも何か書くんなら、少し抑えて欲しいかも
書きたい気持ちがあるだろうけど読み辛いと思った
256 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/06 20:56 ID:???
- それでもハゲより読みやすかった
257 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/06 21:09 ID:???
- >255
作品自体への批評は1さんがエピローグ書き終わってからにしません?
1さんガンバレ!
258 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/06 22:46 ID:???
- >>256 不毛な話になりそなんでコメントは控えます
>>257 ごめんね
259 名前:258 :03/03/06 22:47 ID:???
- 255=258ね
260 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/07 00:31 ID:???
- うぜぇ
261 名前:1 :03/03/07 01:27 ID:???
皆様、長い間お待たせしてスイマセン。
ずっと気になっていたんですが、なかなか暇がなくて来れなくて・・
ようやく、ある程度の時間が取れるようになって今、後編を書き上げています。
ですので、もう少し(あと3,4日ぐらい・・多分)お待ちください。
本当に読んでくださってる人には申し訳ないですけれど。
>>246さんのレスにはちょっとじんときちゃいました。ほんと感謝です。
PS.
感想はどんなのであれ頂けるとてもうれしいです。
次回書くときの参考にもなりますし、反省点を見つけることができますから。
確かに、時間の軸が色々入れ替わるところは自分でも、これは読みにくいかな、と思いましたし・・
262 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/07 01:35 ID:???
- 自分としては1さんが負担無く楽しんで書いてもらえるのが一番です。
お仕事無理せずにがんばられてくださいね
263 名前:通常の名無しさんの3倍 :03/03/07 07:21 ID:???
- ageます
1 名前:kanrinin投稿日:03/03/08 22:36 ID:QxCIozfi
- 不覚でした。前のスレがDAT落ちしてしまいました。
ご批判はありますでしょうが、また、スレを立たせていただきます。
皆様には申し訳ございません。
パート1、並びに前回のスレのログはこちら
http://www.globetown.net/~fuck/char/log/
2 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/08 22:38 ID:???
- 2
3 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/08 22:43 ID:u2WsNPRp
- 3
4 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/08 22:43 ID:PiX5oIuj
- 5㌔㌘
5 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/08 22:43 ID:???
- 4
6 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/08 22:44 ID:???
- 6
7 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/08 22:45 ID:???
- 7
8 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/08 23:19 ID:???
- 8
9 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/08 23:34 ID:???
- 9
10 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/09 00:48 ID:???
- 10
11 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/09 00:50 ID:???
- 乙
12 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/09 01:05 ID:???
- 自分もうっかりしてた。
最近書き込みがないなぁとは思っていたけれど
とりあえずすれ立て乙
13 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/09 02:38 ID:???
- さすがにシャア専だな
うっかりしてたらすぐこれだ。。。
>>1
乙です。1さんは気づくかなぁ
14 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/09 06:02 ID:FMH6d458
- 気付くまではあげてたほうがいいだろ
15 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/09 22:22 ID:???
- 保守
16 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/09 23:42 ID:???
- 保守だけで800くらいまで埋まってもいいや
17 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/10 11:41 ID:???
- 保守
18 名前:ろうろん投稿日:03/03/10 13:29 ID:???
- スレ立て乙です、一応保守しときます。
19 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/03/10 17:21 ID:7gjteFpT
- 保守
1さん気づいてage
20 名前:1投稿日:03/03/10 20:51 ID:???
お久しぶりです。
dat落ちしたのに気がついて、エピローグ書いたのはどうしよう・・お蔵入りかな・・と思ってたんですが、
よくみたら、kanrininさんがまた立ててくださったみたいで、ビックリしました。
本当、恐縮の限りです。自分の書きこみが遅いのがいけないので反省しています。
申し訳ありません。けれど、そこまでして頂けるのは本当に嬉しいです。
保守してくださった方やageてくださった人も有難うございます。
エピローグの方は前編・中編・後編の三つに分けることにしました。
そうしないとどうも収まりが悪いので。
あと、一つ言っておきたいのですが、これは本編の後日談的な話です。
だけれど、そこに明確な答えは敢えて書いていません。エピローグだけど朴歌的な結末じゃないかもしれません。
私自身は、こういったのもありかな、と思っていますけれど。読まれる方には、この話の意味がわからない可能性もあります・・
ですから、あまりそういったのが好きじゃない方は読まない方がいいかもしれません。
長々と、前置きが長くてスイマセン。
それでは、中編です。