平原綾香 / From To
From To
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4点
歌声が無表情。一辺倒で歌うのはカヴァー作を表現するプロとしてはちょっと
ね、、、。これより前発売された徳永英明,槇原敬之らの同じ様なカヴァー、あるいは桜
井和寿「沿志奏逢」などと比べると、他人の歌を「自分」のものにしてしまうような凄み
はまったく無い。平原の歌い方そのままじゃんって感じ、、、。そのためカラオケ的に、
ただ歌っているだけ、って感じ。大先輩の有名曲達が、ぎゃくに歌を助けている。桜井の
様に、有名曲ですらmessageを伝えるための媒体にせしめてしまうほどの歌力は無い。そ
れに徳永みたいに敢えて声をのせるだけにして、曲を俯瞰した違和感で曲の再掘を図ると
いうやり方でも無い。曲だけ前に突っ走って、彼女がその跡をただなぞるというような感
じで後ろに続くだけ。
平原の高音出なさでカヴァーするという方法は、アコースティックな音にすること、それ
でしかない。それで声出なさは帳消しされる。「TRUE LOVE」なんか、あんな平易である
曲なのに音を届かせるのでやっと。
良くてこの作品へは、「ノラジョーンズみたいでいやされた」などといった感想で留まる
がオチ。プロデュース仕上がりを楽しむのが第一、副次的に平原が歌、という存在
感、、、。
ファン以外が1番注目しているであろう「いとしのエリー」,「言葉にできない」にい
たっても特に迫るものは無い。本家の半分も及ばないんではないか。張り詰めた緊張感の
ある「言葉にできない」は、アコギで柔らかい音でもって主題へアプローチを探っていた
が、平原がまるで他の「本人の歌」と変わりが無い。繊細な強弱というものが無い。この
歌手は、声の表情・色が一種類でしかない。
声の無表情さは「いとしのエリー」でもわかっていただけると思う。桑田の方は詞を進ま
せるにつれて細やかな女への気遣いで、声色が微妙に移り変わり。しかし彼女の表現とき
たら寸胴一辺倒。正直彼女が唯一勝負できる武器といえば本人の「明日」みたいな曲調の
み。振った場所にボールが来ないとヒットできず。アレンジを楽しませてもらっ
た、、、。
reviewed by 小夜